寒くなると、甘みが増しておいしくなる野菜のひとつが大根です。近年生産量は減ってきているものの、今でも日本での作付面積、国内生産量は全野菜の中で1位。「すずしろ」の名で、春の七草のひとつにもなっています。大根おろしなどの生食なら、消化を助けてくれる消化酵素の「ジアスターゼ」が豊富なので、年末年始の暴飲暴食で疲れた胃腸にぴったり。火を通して食せば、身体を内側から温めてくれます。今の時期、たっぷりと食べてほしい野菜ですね。
さて、大きくて食べ応えのある大根ですが、丸ごと1本捨てるところがないというのも大根の魅力。部位ごとに適した調理法があるので、おいしく全部を食べつくしましょう。
まず根の上の部分は、みずみずしくて甘みが多く、特に生食に適しています。大根おろしやお刺身のつま、サラダ、なます、浅漬けがおすすめです。千切りをする時は、繊維が縦方向にあるので、繊維に沿って平行に切ればシャキシャキ感が楽しめます。
根の真ん中部分は繊維が少なく、いちばん甘い箇所なのでふろふき大根などの煮物やおでんがおすすめです。煮物をする時は輪切りにして、思い切って皮を厚めにむき、米のとぎ汁か米大さじ1杯くらいをガーゼなどに包んで入れて、下ゆでします。こうすることで、煮汁の味も染み込みやすくなり、やわらかく煮ることができます。
根の下の部分は辛みが強く繊維も多いので、細く切ってきんぴらやお味噌汁などの汁物が向いています。ちなみにこの辛みは「アリルイソチオシアネート」というからし油の成分。腸の働きを整えたり痰を切る効果があるので、ぜひ嫌わずに食べてほしいですね。
それから、捨ててしまいがちな葉の部分。実は根よりも栄養が豊富だということを知っていますか。特にビタミンCとビタミンAがたっぷりなので、ぜひ炒めものや汁もの、佃煮などに利用してみてください。スーパーマーケットなどでは葉の部分を切り落としてしまっている大根も多いのですが、葉付きの大根が手に入ったら、すぐに根元から切り落としてください。葉から根の水分が蒸発してしまうからです。最後に、むいた後の皮も食べることができます。詳しくはこの後で紹介するレシピを見てくださいね。
大根を細く切り、天日で干して乾燥させた切干大根もたっぷり摂りたい食材。太陽の光を浴びて、ビタミン、ミネラル類をはじめ、タンパク質、糖質がぐんとアップしています。
演技力のない下手な役者のことをよく「大根役者」といいますね。その語源は大根がどんな食べ方をしても中毒しない。つまり「あたらない」役者のこと、という説があります。なるほど、大根は安心してたくさん食べられる野菜なのですね。
レシピ「捨てない!大根と桜えびの炒めもの」
大根の皮と葉を捨てずにおいしく食べるレシピです。皮を食すため、無農薬や有機栽培で育った大根が安心です。今の季節の大根なら、十分な甘みがあるので砂糖やみりんはいりません。シャキシャキとした歯ごたえがおいしくて、ご飯のお供にぴったり。冷蔵庫で2、3日は保存できますので、常備菜としてもどうぞ。
[材料]
大根の皮... 2/3本分
大根の葉... 1本分
桜えび ...6g
ごま油...大さじ2
酒...大さじ1
しょうゆ...大さじ1
[作り方]
1. 大根の皮は5?6mm幅、5cmくらいの長さのせん切りにする。葉は粗みじん切りにする。
2. フライパンにごま油を熱し、弱めの中火でじっくりと大根の皮を炒める。
3. しんなりとしてきたら桜えびを加え、酒、しょうゆを入れてさらに炒める。
4. 大根の葉を加えてサッと炒め、全体に火が通ったら完成。
持ってみてずっしり重い大根を選びましょう。ぜひ葉付き、土付きの新鮮なものを
かたい皮もじっくりと炒めれば、ちょうどいい歯ごたえになります
桜えびがうまみになるのでダシいらず。とても簡単です
おいしく食べられて、生ごみを出さない、まさにエコロジー料理です
おまけ
大根といえば、私が好きなお漬物がこの「いぶりがっこ」。大根を囲炉裏の上につるし、燻製にしてから漬け込むという、手間ひまのかかった秋田県の名産品です。いぶした香りとパリパリと固めの大根の食感が独特で、私は大好き。みなさんもぜひお試しを。