静岡の思い出 その2

 生活する環境だけでなく、シゴトも至って楽しく出来ました。

元々ビジネス・ライクな付き合いが嫌いで、お客様とどっぷりはまるタイプなので、公私に亘りいろいろな方々に助けて頂き、今も長いお付き合いをさせて頂いてる方が沢山おります。

 

 作家活動も順調で、二作目の「蹴殺」を徳間書店さんから出版しました。また師匠の杉村先生がゲームのシナリオをやるようになりまして、「バイオハザード2」の発売時に、ノベルズを書かせて頂きました。

 

 しかし二足の草鞋というのも意外に厳しいものがありました。特に辛かったのは、文芸誌に発表する短編小説でした。売れっ子作家でもない私が、書けませんでしたということではとんでもないことになります。シゴトの合間に書くわけですが、なかなか進まない。担当の編集者方から進み具合を聞かれると、

 

「もう明日には原稿送れます」

 

「パソコンの調子が悪くって......」

 

「原稿、データが消えちゃったんです!」

 

 もう言い訳のオンパレードで、結局何時も出来上がるのは、締め切り当日のギリギリです。

 

 しかし不思議なんですよね。三週間も余裕があつたのに少しもペンが進まない。しかしいざ締め切り前日になると、アイデアが湯水のごとく沸いて来る。そして徹夜で一気に書き上げてしまう。

 

 元々だらしのない性格ですが、「火事場のクソ力」とも言いますが、土壇場に追い詰められた人間の底力ってのは凄いものがありますね。