四駆に惹かれて

 東京に居る頃は、週末に時間が取れると鴨川へサーフィンにも行きました。不思議なもので、海でぼうっとしていると、北海道の自然が思い出されるのです。バブルの真っ只中にいて、毎日、朝から晩、または深夜まで活動していると、ふと自然に包まれると何かが、不思議と心を落ち着かせてくれました。

 そんなある日、海沿いに停まっているランドクルーザーに目が止まりました。バブルの申し子の私は、街で目を引くようなクルマじゃなければクルマじゃないと決め付けていました。
 ですから四輪駆動というジャンルは、私のクルマ選びのカテゴリーには一切入ってなかったのです。にも係わらず、そのどっしりとした雰囲気に妙に惹かれました。そして北海道の頃、友人のランドクルーザーに乗って、スキーに行っていた頃を思い出したのです。
 そうなるとムクムクと四駆というカテゴリーが妙に気になりだし、とうとう衝動買いでいすゞのビッグホーンを購入してしまいました。

 このビッグホーンの購入は、また私の週末の行動パターンをすっかり変えてくれました。今度は林道巡りにはまってしまつたのです。国土地理院の専門の地図を買い、林道を走るのです。林道は元々林業従事者や地元の生活者の為に作られたものですから、スピードを上げて走るものではありません。路面は砂利道ですし、細い上に崖に面した道もありますから、注意が必要です。奥深く林道を進んでいくと、もうそこには都会の匂いなんかは当然しませんし、渓流があり、緑の木々に囲まれ、思い切り森林浴が出来るのです。湧き水でコーヒーを入れ、ぼんやりと過ごす。何とも贅沢な時間でした。
 こういったのんびりと過ごした時間が、また物書きとしての一つのきっかけを作ってくれました。

 その頃、シナリオの修業も落ち着き、私はあるご縁で、小説家の今は亡き山村正夫先生と出会うことが出来ました。作家としての基礎を作り上げてくれたのが杉村先生で、小説家として世に送り出してくれたのが山村先生でした。

 私は昔から人の出会いに恵まれている方で、節目節目に人生のきっかけを与えてくれる方に巡り合う傾向にあります。
 その山村先生のお陰で、小説家として世に出ることが出来たのです。デビュー作品は、骨髄ドナーが誘拐されるというハードボイルドで、林道の話もふんだんに取り入れました。作品名は、「死神島(角川書店)」でした。