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2009年2月アーカイブ

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有機農業を始めて37

 

  「このイチゴを食べてみて下さい。有機農業でイチゴを作っている農家はとても少ないので、貴重ですよ。」と言われ、有機で育てられた女峰いちごを一粒いただいきました。さわやかな甘さでした。

  1971年から有機農業を続けてきたのは埼玉県比企郡小川町で「霜里農場」を営む金子美登(かねこよしのり)さんの畑です。農場の3haの敷地内には畑、母屋があり、数十羽の鶏、合鴨、3頭の牛などが飼われています。

   屋根には太陽電池、庭には牛糞を活用したバイオガス施設があり、調理用ガスと液状肥料となり、近くの里山の間伐材を活用したウッドボイラーで給湯と床暖房をするなど、エネルギー自給にも取り組んでいるのです。食糧の自給だけでなく、エネルギーの自給まで。こんな農家が日本にあるとは知りませんでした。

 

 

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有機栽培いちご

 

   小川町は東京の中心から50数キロ離れた人口35000人のまちで、豊富な森林資源と良質な水に恵まれ特に手漉き和紙は国の重要無形文化財に指定されています。武蔵の小京都と呼ばれ昔からの文化を現在も育んでいるまちです。

   近年は有機農業やバイオマスなど地域資源を生かした循環型のまちづくりとしても知られ、都会から多くの若者が移り住んでいます。

 

   金子さんが有機農業を始めた1970年代初頭は、民間のシンクタンク「ローマクラブ」がまとめた「成長の限界」というレポート1972年に発表された頃です。そのレポートは現在のままで人口増加や環境破壊が続けば、資源の枯渇や環境の悪化によって100年以内に人類の成長は限界に達すると警鐘を鳴らすもので、世界で大きな反響を呼びました。 

  そして、破局を回避するためには、地球が無限であるということを前提とした従来の経済のあり方を見直し、世界的な均衡を目指す必要があると主張されていました。翌73年には石油ショックはローマクラブの警告がまさに現実のものとなった最初の出来事でした。

 

また、1970年は日本で"減反政策"が始まった年でもありました。米の在庫が増加の一途をたどったため、政府は、新規の開田を禁止し、政府米買入限度の設定と自主流通米制度の導入、一定の転作面積の配分を柱とした本格的な米の生産調整を行うことを決めたのです。

金子さんは、この時、農家はやる気を無くし、人々は米を大切にしなくなると思ったと言います。こうしたことが起きる中で、金子さんは「生態学的農業」を始めたのでした。

 

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                                              土には沢山の微生物が

 

 

  「有機農業推進法」が制定されて

 

野菜を買うなら、地元の無農薬野菜が良いと思う人が増えていますし、最近は小売店の野菜売り場に行けば「有機」というコーナーが目立つようになりました。しかし、調べてみて驚いたのですが、日本の有機農産物の生産量は、たったの1%程度なんです。そして、「有機農業の推進に関する法律」ができたのは200612月のこと。

金子さんもその法律の成立に大いに尽力されました。

 

同法律では、「有機農業は、農業の自然循環機能を大きく増進し、かつ、農業生産に由来する環境への負荷を低減するもの」とされています。翌年の20074月に、農水省は「有機農業の推進に関する基本的な方針」を策定し、普及に向けた5ヶ年計画がスタートしたのです。

有機農法は、食べる人、作る人の健康に良く、土壌も健康にし、沢山の微生物、鳥や虫の棲む豊かな生態系が育まれるものです。そして、地域のものを食べることで輸送に関わるCO2の排出量を減らすこともできるのです。

 

 

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                                                       エネルギーも自給

 

 

根の無い国、日本

 

   日本の食糧自給率は40%と低く、全国の農業者は高齢化し、耕作を放棄された農地が増えています。金子さんはそんな日本の状況を「切り花国家」と言います。農業や農村といった根の部分が乏しく、商業工業ばかりが大きくなっていったからです。

 

金子さんは、提携する消費者に野菜やお米を届けるだけでなく、霜里農場の農産物を原料とした日本酒、うどん、お醤油、豆腐など農商工連携事業にも力を入れ、それらの商品は確実に支持が広がってきました。

そして、その様子をみて、2001年に同じ地区の慣行農法(農薬や化学肥料を使う農法)農家の方が1軒、有機農業に転じ、次いで2003年には3軒の農家が転向したのです。20092月現在で下里地区における慣行農家(自給的農家は含まず)は残すところ2軒になりました。

この2軒の農家が有機農業に転じるためには、生産物であるお米を適正な価格で買い支える事が肝要です。日本ではまだ集落全体が有機農業である地区はなく、この2軒の農家が有機農業に転じれば「日本初の有機の里」が実現することになります。

 

そして、金子さんは、これまでに国内外から100人を超える研修生を受け入れ、農業の後継者を育成してきました。次の時代の農業を担う有機農業者が各地で着実にその輪を広げているのです。

 

霜里農場 http://www.shimosato-farm.com/

ゆうきひろがるキャンペーン http://www.yuki-hirogaru.net/index.html 

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野菜ばかりが続いたこのコラムですが、今回は初の魚介類「スルメイカ」をお届けしましょう。

 

日本で現在、食用となっているイカはヤリイカ、アオリイカ、モンゴウイカ、スルメイカ、ホタルイカなどで、このうちスルメイカの漁獲量はすべてのイカの90%を占めているそうです。私たちの食卓にのぼる大半のイカが。スルメイカなんですね。スルメイカの名前の由来は、乾物の「スルメ」に加工するイカだからなのだそうです。

 

さて、お正月にスルメイカをたくさん食べたという人も多いのではないでしょうか。干したスルメイカを使った松前漬けや、そのままあぶったスルメなど...。スルメイカは縁起がよいとされる食べ物。スルメのことを「あたりめ」ともいいますね。これは験を担ぐ商人たちが自分の商売に影響しないよう、悪い言葉を避けるために生まれた言葉。

 

「するめ」の「する」というは「賭けごとでお金をする」や「財布をすられる」などを連想させ、縁起が悪いといわれました。そこで、むしろ反対の意味であたる「当たり」を使って「あたりめ」と呼ばれるようになったというわけです。また婚礼のお祝いには「寿留女」と書かれ、利用されます。これは花嫁が逃げてしまわないようにアシ(足=銭)が多いということから縁起をかついでいます。

 

スルメイカにはコレステロールが多いのですが、血中コレステロール値の抑制を助け、中性脂肪を少なくするタウリンも多く含んでいます。また発育を促進し、味覚を正常にする亜鉛、血行をよくし脳神経の働きを助けるナイアシン、細胞の再生やエネルギー代謝を促すビタミンB2も。またイカ墨はビタミンEが豊富で、ムコ多糖体とペプチド複合体が含まれるため、抗がん作用があるのではないかと今、注目されています。

 

料理なら、煮付け、サラダや酢の物、フライやてんぷらなどの揚げ物、炒め物など、和洋中問わずいろいろ活用できて便利です。鮮度がよければ、刺身や塩辛もおいしいですね。煮物の場合は、煮はじめは柔らかく、途中硬くなり、さらに煮ると再び柔らかくなるので、軽く火を通すか、または30分以上じっくり煮込むか、どちらかにするのが調理のコツ。

また、生食の際は寄生虫に要注意。特に「アニサキス」はふつうの場合排泄されますが、まれに胃や腸の壁を食い破ってしまうことがあります。アニサキスは白い半透明で、体長2?3cmくらい。渦巻き状になっていることが多く、肉眼でも見えます。

 

イカの処理をする時には、よく表面を見ながら洗いましょう。―20℃で一晩以上冷凍するとアニサキスは死滅するため、心配な人は冷凍イカを利用するのがいいですね。

今回紹介するレシピも過熱調理をしないため、この点にも注意して、鮮度のいいスルメイカを使ってくださいね。

 

 

レシピ「濃厚イカの塩辛」

 

年中出回っているスルメイカですが、特に肝がたっぷり入るのは、冬のスルメイカ。この時期だからこそ、おいしい塩辛を作ってみましょう。みなさんは市販されているイカの塩辛の、品質表示を見たことがありますか。多いものだと甘味料や酸味料、保存料、酸化防止剤、漂白剤など、添加物が満載です。でも自分で作れば、イカ以外の材料は塩と酒のみで、安心して食べられるのもうれしいですね。

 

実は今回作るイカの塩辛はちょっと変わっています。あるおすし屋さんを訪れた際、「突き出し」でいただいた塩辛が、あまりにおいしくて真似て作ってみたところ、なかなかおいしくできない。試行錯誤の末、その味に近いものが完成したのです。水っぽくなくて味が濃厚。イカをしっかり乾かしているので、通常の手作り塩辛よりも、日持ちがいいです。寒風が吹く乾燥した日を選んで、ぜひトライしてください。

 

 

 [材料]

スルメイカ... 2

塩... 大さじ1/2

酒...大さじ1

ゆずの皮...適量

 

 

 [作り方]

1.     イカをエンペラ、胴、肝、ゲソの4つに分け、エンペラと胴の皮をむく。身を開いて、軟骨を取り除きよく洗う。

 

2.     肝についている黒い墨袋をゆっくり引いて取りはずす。

 

3.     ざるにエンペラ、胴、肝を重ならないように並べ、肝全体に塩を振る(分量外)。ベランダなど風通しのよい場所に一晩置く。

 

4.     胴の端が乾いて透き通り、パリッとしたら干しは完了。まだ水っぽいようだったら、時間を延ばして干す。

 

5.     エンペラ、胴とも長さ5cm・太さ4mmぐらいの細切りにする

 

6.     肝はボールに入れて、スプーンでしごいて皮をはずす。スプーンでたたくようによく混ぜて、塩と酒を加えてさらに混ぜる。

 

7.     65を加え、よくからめるように混ぜる。

 

8.     冷蔵庫で1日以上寝かせたほうが味がなじんでおいしい。盛り付けて、ゆずの千切りを飾る。

 

 

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         身が大きくて肉厚で、濃い茶色のイカがおすすめです。

 

 

 

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エンペラ、胴、肝の3点セットを干します。使用しないゲソは、炒め物など他の料理で活用してくださいね。

 

 

 

 

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乾燥した冬に一晩干せば、反り上がるくらいパリパリに。「硬そうだけれど大丈夫?」と思うかもしれませんが、ここまでやってしまってください。

 

 

 

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乾燥したイカが肝や酒のうまみを吸って、もっちりとおいしく変化するのです。細切りにするのもポイントですよ。