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「私のヒストリー」第5回

 

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「おいっ。窓だ、窓を締めろ!」
 ポーっという汽笛に続いて大人たちの大声が車内に響きました。
 列車に揺られウトウトしていると、同じ車両に居る大人達が大慌てで窓を締め出しています。蒸し暑い車内でせっかく入り込んでくる心地よい風を何で止めてしまうんだろう、と思っていたら、私の乗った列車は、まさにトンネルに入って行くところでした。
 蒸気機関車が窓を開けてトンネルに突入したら、煤煙が列車の中に入り込んで真っ黒になってしまいます。
 ですからトンネルが近づく度に、窓側の人は大変です。ほらっトンネルだ! とみんな慌てて窓を閉めるのです。

父親に見送られ、不安な思いで高松築港をたった一人で出た私ですが、乗り換えた汽車のこんなトンネル騒ぎで、不安な気持ちも何となく薄れるものでした。
 トンネルが近づくと汽笛がポーっと鳴る。みんなが「ほらっ来たぞ!」「急げ!」と慌てて窓を閉め、トンネルを抜けると窓を開ける。しまいにその間隔が短くなると窓際の人たちは大騒ぎです。「うわー、間に合わない......」そんな感じで窓際に座った私もいつの間にか窓の開け閉め担当になり、車内では見知らぬ人たちと妙な連帯感が生まれたものでした。

今や新幹線は飛行機よりもエコ出張、という感じでJRは宣伝をしています。窓は密閉され、エアコンが車内を快適にし、最近では電源コンセントに喫煙ルームまで設置されています。本当に時代の進歩とは目を見晴らせるものがありますね。

木曽川に沿って走る列車の窓から、吊り橋やダム湖、そして水力発電所が見えます。香川県では火力発電所しか見たことの無い私にとって、車窓の外は飽きることのない景色でした。
 中央本線の名所「眠覚めの床」を通過する時は、車掌さんからアナウンスが入ります。
木曽川の急流が両岸の花崗岩を縫うように流れています。乗客はその景色の素晴らしさに感嘆の言葉を上げています。

四国から長野までの船と汽車を乗り継いだ小学一年生の一人旅です。
間違ってないだろうか? という不安。トンネルでの窓の開け閉め。列車から眺める外の景色。木曾福島での「釜飯」の美味しさ。まさにいろいろな不安と楽しさが混同した一人旅でした。

やがて大糸南線に乗り換え、目的地の豊科駅です。
駅には、母親や親戚の人達が大勢で迎えに来てくれていました。
病院に入院している叔父さんは、六歳の子供が25時間を旅することを凄く心配してくれていました。
「良く来たな!」
 
病室の叔父さんは私の頭を思い切り優しい目で撫でてくれました。
「不安だったろ」
「へっちゃらだよ」
 四国で日に焼けている上に、列車の煤煙でドス黒くなっている私の顔を見て、叔父さんは「四国の子供は元気がある!」と誉めてくれたのを覚えています。
 へっちゃらと強がった私ですが、でもこの25時間の一人旅は、私を強くしてくれました。小さい頃から、母親には「自分のことは自分でしなさい」といつも躾けられていました。四国から長野の旅は、自分のことは自分でやるという意味で、大きな自信を植えつけさせたのです。
 こうと決めたら、人に頼るよりも自分で成し遂げて行く。こんな気持ちを持つようになったのも、この一人旅だったのかもしれません。

 

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